老犬神社 ~定六とシロ~


ろうけんじんじゃ

大館市葛原(鹿角市十和田草木)

 

最終更新:2024/07/09


🖌菅江真澄の道
  • 来訪:享和3年(1803)4月
  • 年齢:50歳
  • 書名:すすきの出湯
  • 形式:日記

真澄記:4月8日

『釈尊の生まれた日になぞらえて山の上に鎮座する寺社各々を詣でた。

老犬神社にはモガサ(天然痘)が軽くなるよう祈った。』


 後に随筆《筆のまにまに》に老犬神社の由緒を記録する。

見出し

●老犬神社

  • 祭神:忠犬シロ
  • 例祭:4月16日(宵祭)、17日(本祭)

 日、


 4月の例祭には、犬を連れた多くの愛犬家がお参りに訪れる。

令和2年(2020)の例祭には晴れて秋田犬型の狛犬が一対奉納された。

標柱
📍[コラム] 標柱表記データ

前:菅江真澄の道 老犬神社

横:文政七年(一八二四)ころ、

老犬神社の由緒を記録。

その文に、十二所にいと近き葛原といふ村あり。そこに斉る老犬大明神といふ神ませり。

後:平成四年 北秋田郡青年会

 あ


◆定六とシロ 伝説のあらまし

 『定六とシロ』の物語は県北ではかなりメジャーな伝説で、書籍にも多く記述されています。

 

物悲しいお話ですが、シロの忠犬ぶりはハチ公と双璧をなすと言えましょう。

⊞ 伝説・定六とシロ

 江戸時代、南部領草木(現在の鹿角市の内)に定六というマタギがいた。
マタギとして確かな腕前を持ち、一説にはかのマタギの祖・万事万三郎の子孫ともいわれる定六はどこでも猟ができる狩猟免状を持っており、
相棒であり愛犬のシロと共に行動を共にしていたのだった。
 
 それは忠犬と主人の哀しき物語…。
 

定六のうっかり

  ある日、定六はある雪の朝、いつものようにシロともに山へ狩りに繰り出していた。
カモシカを近くの山で見つけ、追いかけてるうちにいつの間にか来満峠を越え領外の三戸城内まで入り込んでしまった。
狩りに夢中になっていた定六はそれに気づかずに発砲し、地元のマタギ達に問い詰められ役人に突き出されてしまう。
 
 しかし定六には天下御免の狩猟免状がある。これを見せれば嫌疑は晴れるだろう。
定六は懐に忍ばせていた免状を見せようとした。
しかし、免状が無い。何故だ?
定六はその日に限って免状を忘れて来てしまったことに気が付いたのだった。
このままでは投獄され首を刎ねられてしまうだろう。神経が凍りつく定六。
 
ご主人の進退は残された愛犬・シロに託されたのだった。
 

シロ、走る!

 シロは賢い犬だった。
牢の中から顔を覗かせた定六は外のシロを見やり、
「シロ、あの巻き物を取ってきてくれんか。あのご先祖様の免状さえあれば助かるんだよ。」
とポツリと漏らした。
シロは一声「ワン!」と鳴いたら踵を返し家に向かって走り始めた。
シロには人間の言葉が分かるのだろうか。
長く狩りを通じて主人と共にしたシロには心が通じているのだろう。
定六を救うべく、シロは40km以上の距離を弾丸のようにはしり火を吐くように吠えた。
 家にいた定六の妻は一匹だけ戻ってきたシロに当惑したが、棚に残された狩猟免状を見てすべてを察し、
シロに免状を託すと休む間もなくシロは定六のもとへ舞い戻った。

果たして間に合うか。

哀しき結末

 シロが駆け付けた時、すでに事は終わっていた。
定六の魂は刑場の露と消えていたのだった。
定六は最後までシロを案じていたという。
刑場に打ち捨てられた定六の遺骸のそばに、シロはそっと寄り添い片時も離れることはなかった。

夜になり、シロは定六の遺骸を口へくわえ、峠に近い森へ運び、三戸城を見下ろして怨みの遠吠えを幾度となく繰り返すのだった。

後にこの森を「犬吠え森」と呼ばれるようになった。

エピローグ

 その後、残された定六の妻はシロと共に家を離れ、大館十二所付近の葛原へ移り住んだ。

ほどなくしてシロの姿は見えなくなり、近くの山腹で白骨になっている姿が発見された。
 それからというもの、この山の下の津軽街道を通りかかる武士の馬が狂奔し暴れまわり武士に限り大怪我をするという変事が続いた。
人々は主人の定六を武士の手で無残に殺されたシロの怨念だと思うようになった。
 
葛原の人々はシロの鎮魂のため、山の上に老犬神社を建て鎮めたということである。
定六の妻はその後どうなったのか、語る文献はない。


◆左多六とシロ出生の地(鹿角市十和田草木)

 先祖は崇神天皇の頃、二戸郡より”定六“と申す又鬼が皮投岳をこえきて、鹿角の里を開拓したという。その子孫も代々左多六と称し、又鬼を生業とした。

中には源頼朝公の富士巻狩に召出され功名を挙げた人もあった。


アクセス

  • 駐車場:あり
  • 案内板:あり
  • トイレ:なし
  • 備考:駐車場から社殿まで10分ほど山道を歩く。自動車用の舗装道路もあるがかなりの急こう配。

関連アーカイブ

でわwiki関連リンク

◆参考文献


取材日:2018/04/17

2021/04/06

【瀬川 拓男 (編集), 松谷 みよ子 (編集)/未来社】
【高橋よしひろ/(集英社文庫―コミック版)】