ケダニ


ケダニ

【けだに】

【自然、虫】


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 秋田県ではツツガムシをケダニといっている。

ツツガムシ病の病原体はリケッチア・オリエンタ リスと呼ばれる大きさ約0.3クロンの微生物である。自然界ではノネズミとツツガムシが感染しており交互に伝播しあっていると思われる。

人間がこの病原体をもったツツガムシの幼虫に刺されると10日ほどの潜伏期間を経て高熱を発し発疹ができ、高い死亡率を示したが、戦後は抗生物質の発見によって激減した。

 ツツガムシは雄物川流域に生息しているケダニ科の節足動物で幼虫は体長0.2㎜ほどである。

田畑で働くとこの被害にあうことが多くそれによって死亡した人が非常に多かったので、その被害から逃れようとケダニの霊を慰めようとする信仰がおこったものと考えられる。

そのようなことから被害の多い地域にはケダニ地蔵と呼ばれる地蔵様が祀られるようになった。

 

ケダニ地蔵

①平鹿郡十文字町睦合

 下堀の高橋真一氏宅の西側の土手の陰の小祠に祀られてある。安政4年(1857)6月吉日建立で、世話方は林蔵、三之助とある。

毎年半夏のころ神官を招いてお祭りをする。

最近は失せ物や縁談にご利益があるといい、参詣者が多い。地蔵様に衣類を身につけ、頭巾をかぶっておられた。

 

②同町 下今泉

 本城神社の境内にも祀られている。

ここの地蔵様も頭巾と衣類をつけられている。お祭りは毎年の旧6月24日という。この神社の境内には小さいワラ仁王様や蚕神なども祀られている。

 

③同町 別明

 三上神社境内にもケダニ地蔵様が祀られている。

頭巾と衣類をつけられているが、その上に扇の模様のある垂れ幕をまとっておられた。

お祭りは毎年7月23日と8月23日という。

 

④同町 舘前

 土谷忠吉氏宅の前に小さな八幡神社が祀られているが、その神社の階段の左側に高さ58cmの地蔵様が立っていられる。

この地蔵様は、もと朝日野にあったものを移し祀ったものという。

 

⑤湯沢市弁天

 町中を流れる雄物川の沿岸では、ケダニが毎年発生し、数多くの死者がでた。特に弁天の角間地域の農民達は原因がわからないため、悪魔のように恐れ『ケダニ地蔵尊』を祀っていたという。

 ある年、天台宗出羽の湯殿山からわざわざ鉄門上人が遣わされ、この悪魔を調伏してくれたという。鉄門上人は、長さ10cm、幅3cm程の地蔵尊のお札を三千枚つくり、

「毎年このお札を雄物川に流すべし。このお札がなくなるときにはケダニも調伏されるだろう」

といって授けられたという。

 村人は毎年旧6月24日にケダニ地蔵尊のお祭りをし、このお札を流して調伏を祈願したという。

 いつの頃からかこのお札を拾った者だけが悪魔の難を免れることができると言われるようになり、我先にと川の中に入ってお札を競い拾ったという。

 

 ケダニ地蔵尊の下には、ケダニを調伏する呪文を書いた小石がたくさん埋められてあったといい伝られている。


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◆参考文献


最終更新:2024/08/23

【菅江 真澄 (著), 内田 武志 (編集)/三省堂書店オンデマンド】